PROJECT STORY
官民連携で実現したエネルギーを
地産地消する
低CO2で災害に強いまちづくり
田町スマエネパーク
東京ガス×港区×三井不動産×三菱地所×愛育病院
東京ガスはCO2排出量の削減やエネルギー全般の安定供給のために「スマートエネルギーネットワーク(スマエネ)」に取り組んでいる。このスマエネが大規模なまちづくりで初めて導入されたのが「田町スマエネパーク」。街全体でエネルギーを地産地消し、低CO2で環境性に優れ、災害時においてもエネルギーの安定供給を可能にした大型再開発プロジェクトだ。
この未来型のまちづくりを実現させたのが、東京ガスの高い技術力と、行政や他社と協働して大型プロジェクトを推進する信頼に裏付けられた総合力。このプロジェクトで、スマートエネルギーネットワークの建設と運用、民間街区と公共街区の不動産開発、行政や事業者とともにエネルギーを軸にした街の運営をリードした3人に、その意義や今後の展開について聞いた。
「田町スマエネパーク」はJR田町駅東口に誕生した、港区と東京ガスを中心とした企業による官民連携の大規模開発プロジェクト。公共街区には公園を中心に港区の公共公益施設や病院などを配置し、民間街区には高層オフィスビル、ホテル、商業施設を建設。東京ガスは熱・電気・情報をネットワーク化し、街でエネルギーをつくり、街全体で最適な供給と使用を可能にするスマートエネルギーネットワークを構築。需給連携や自動運転を含めた最先端の技術を結集し、高い環境性と防災性を兼ね備えた安心・安全な未来型のまちづくりを実現した。
PROJECT MEMBER
國友 理
東京ガスエンジニアリングソリューションズ
エンジニアリング本部
スマートエネルギーネットワークシステム部
岸田 一聰
東京ガス
都市エネルギー事業部
スマエネ事業推進部
木村 洋介
東京ガス用地開発(株)
(東京ガス都市開発(株)より出向)
田町事業部
今回のプロジェクトで
街はどのように変わるのでしょうか?
國友 エネルギーを軸にして新しいまちづくりを行ったのが「田町スマエネパーク」。エネルギーを核に、新しい価値を創出したプロジェクトの第一号です。地上の再生可能エネルギーである太陽熱集熱器や地下のガスコージェネレーション等で熱と電気をつくる2つのプラント(スマエネセンター)を建設し、街全体にエネルギーを供給しています。この仕組みが革新的なのは、熱や電気だけでなく情報までをネットワーク化したことにより、エネルギーを供給する側と使う側を双方向につないだことです。最先端のICTやIoT技術を駆使した街全体の制御管理や自動運転により、街全体で最適なエネルギー供給を実現し、 CO2の排出量も格段に抑えられます。
岸田 この大規模開発では東京ガスがこれまで培ってきたエネルギー関連の技術やノウハウが詰まった、最新鋭のまちづくりを行っています。たとえば、災害で外部からの電力供給がストップしても、このエリアでは熱・電気といったエネルギーを一定期間継続して使用できます。また、計画段階から行政、需要家、東京ガスが参加するスマートエネルギー部会を立ち上げ、竣工後もその枠組みを継続させています。こうしたまちの環境性を向上させるための継続的な取り組みもエリアの価値の向上に貢献しています。
木村 このプロジェクトによる再開発で、田町駅東口の景色が大きく変わりました。公園のまわりには港区の施設や病院が建てられ、駅直結の高層オフィスビルにはさまざまな企業と商業施設が入り、ホテルも新設されました。たくさんの人が集まり、思い思いの過ごし方ができる、にぎわいにあふれる新しい街に生まれ変わりつつあります。
これからの大規模な官民一体開発で
エネルギー事業者に求められることは?
國友 「田町スマエネパーク」は港区策定の「田町駅東口北地区まちづくりビジョン」に基づいて、官民連携でまちづくりが行われました。これからのまちづくりで求められているのは環境性と防災性です。今回のような大型プロジェクトでは計画、設計、施工、運用管理の各フェーズを一気通貫させて、コンセプトがぶれることなく推進して高い環境性と防災性を両立させ、かつ持続させる仕組みが重要でした。実現できたのは、スマートエネルギー部会を開催・運営し、関係者全員とビジョンを共有し行動できたからだと思っています。
岸田 田町スマエネパークでは、開発時期の異なる民間街区と公共街区に、開発段階に合わせて2つのスマエネセンターを建設しました。両スマエネセンター間を熱融通導管で結び、全体最適となるよう一体で運用しています。また、各スマエネセンターでは、ガスコージェネレーションで熱と電気をつくるほか、太陽光パネル、風力発電機による再生可能エネルギーや、未利用エネルギーを有効活用しています。災害時対応では、これまで培ってきた東京ガスの、安心・安全への取り組みが活かされています。
木村 オフィスビルに入居する企業や商業施設、ホテルにとって、安定したエネルギー供給は経済活動の生命線です。東京ガスのスマートエネルギーネットワークで災害時にも都市機能を損なわないBCP(事業継続計画)への対応に加え、約2,000人の帰宅困難者を受け入れられます。これらは民間街区の大きな付加価値であり、デベロッパーに高く評価されています。さらに公共街区では区民避難所として約4,500人の受け入れが可能。ゼロベースから新しい街を創り上げたからこそできた、災害時対応機能と言えるでしょう。
プロジェクトを通して発見した
東京ガスで働く魅力とは?
國友 プロジェクトを通して、エネルギーと情報をネットワーク化して街の価値を高めるという、誰もやっていないことに挑戦でき、多くの人と一緒に、ずっと残る街を創り上げるという醍醐味と喜びを感じられました。「本当にできるのか?」と思われたことでも、構想を細かいところまで考え抜き、協働する方々に恵まれたおかげで次々にクリアできました。より大きな成果に結びつけられる新しいチャレンジができるのが、東京ガスの大きな魅力だと思います。
岸田 東京ガスというとガス供給のイメージが強いかもしれません。しかし、ガスをエネルギー源として熱と電気を製造・供給する総合エネルギー事業、社有地を有効活用して新しい街をつくるという不動産事業など、東京ガスの事業領域と可能性はますます広がっています。私自身、このプロジェクトに関わることで幅広い知見を身につけることができ、次に活かすのが楽しみです。
木村 多くの方に協力いただき、新しい価値を提供するまちづくりに携われるのは大きなやりがいです。特に今回のプロジェクトでは、トップクラスの事業パートナーの方々と協業でき、大きな刺激を受けました。自分を高め、成長させる機会がいたるところにあるのが、東京ガスではないでしょうか。
これからの自分、
これからの東京ガスとは?
國友 今回のプロジェクトで得られたノウハウを、他の新規スマートエネルギーネットワーク物件に反映させ、国内外に拡大させたい。エネルギーは人々の生活と経済活動を支えるものです。多くの企業の技術力や知見をお借りしながら、東京ガスの豊富なリソースを組み合わせれば、まちづくりを含めてより良い未来を築けると確信しています。
岸田 私自身はこれまで設計フェーズ業務を中心に関わることが多かったので、今後は建設や運用フェーズにも積極的に関わり、高い視座と幅広い視点で最適なエネルギーシステムを構築したいと思っています。地震が多い日本では複数の電力供給によるリスク回避や、BCP(事業継続性)の確保は社会的な共通ニーズです。その実現こそが、大きな社会貢献だと考えています。
木村 スマートエネルギーネットワークと不動産開発を一体化させ、環境・社会・経済のあらゆる側面から付加価値を高めたまちづくりに携わりたいと思っています。東京ガスは、好立地で緑や水辺に接した魅力ある土地を持っていますので、そこで働く人や住む人に快適で、地域の発展に繋がるまちづくりができるチャンスは多い。エネルギーを軸にした、先進的で魅力的なミクストユースのまちづくりをさらに進めていくのが目標です。